5月に引退を表明した将棋の中座(ちゅうざ)真(まこと)八段(54)が19日、現役最終対局に臨んだ。東京都渋谷区の将棋会館で指された第37期竜王戦(読売新聞社主催)ランキング戦4組で野月浩貴(ひろたか)八段(50)に104手で敗れ、28年間の棋士生活に別れを告げた。

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 中座八段は北海道稚内市出身。1981年、棋士養成機関「奨励会」入会。96年、四段(棋士資格)への年齢制限を迎えた26歳の時、棋士に。創案した革新戦法「横歩取り△8五飛」は現代将棋の定跡に大きな影響を与え、優れた新手や新構想を生んだ棋士に贈られる升田幸三賞(98年度)を受賞した。

 最終戦の相手となった野月八段も北海道出身で、10代から奨励会で切磋琢磨(せっさたくま)した間柄。「横歩取り△8五飛」を発展させた棋士でもあった。

 中座八段の先手で横歩取りに進んだ本局。野月八段は飛車を8五の地点に引き、メモリアルな一局の象徴とした。最終盤まで難解で形勢判断の難しい勝負になったが、最後に抜け出した野月八段が競り勝った。

 局後、中座八段は「懐かしい8五飛を指されて、さすがにうまいなあと思いました。久しぶりに指して楽しかったです。8五飛は何度も言われるので、将棋人生の大きな一部だったのかなと思います。野月さんのおかげですね」と笑顔で語った。

 野月八段は涙を浮かべ「8五飛で教わってみようと思って指したんですけど、けっこう結論が出なくて。でも……それが楽しかったです。子供の頃からすごくお世話になって、目標としている先輩なので、一生懸命指そうと思いました」と振り返った。(北野新太)

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