「コバショ」の愛称で親しまれた兵庫県尼崎市の「小林書店」が31日、閉店する。創業から72年。店主のこだわりの本が並ぶ小さな店は、人と人をつなげる居場所にもなってきた。まちの本屋がまた一つ消える。
10坪ほどの店内には、店主の小林由美子さん(75)の売りたい本が並ぶ。それは、「生きる希望の持てる本。悲しいこと、つらいことがあったとき、人生は生きるに値すると思える本やね」。
店主に会うために、各地から多くの人が足を運ぶ。店主の柔らかい語り口に引き込まれ、店内で1時間も過ごす客も珍しくない。
そんな伝説の本屋は2020年にドキュメンタリー映画「まちの本屋」(大小田直貴監督)になった。小説「仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ」(川上徹也著、ポプラ社)も刊行された。
ここ数年、由美子さんは腰を痛めて手押し車が手放せない。数年前に脳梗塞(こうそく)になった夫の昌弘さん(79)もリハビリが続いた。4月、フェイスブックで閉店を知らせた。
5月31日の最終日。由美子さんは店内に紅白の横断幕を張る。店の真ん中に酒樽(だる)を置いて、訪れた客に振る舞い酒を配ろうと思っている。(谷辺晃子)
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