大きさは縦横9メートル、重さは4キロ。そんな超特大の手紙が11日から、三重県伊賀市大谷の前田教育会館蕉門(しょうもん)ホールで公開される。送り主は伊賀地方の近代化の礎を築いた実業家で、旧上野町(現伊賀市)の町長も務めた田中善助(1858~1946)。公開されるのは四半世紀ぶりという。
田中は伊賀地方に鉄道を通したり水力発電所や下水道を整備したりし、景観保護活動にも取り組んだ。手紙は新田開発用のため池を整備する際、他人の山林に道を造ってしまったことを謝罪する内容で、1899(明治32)年、山林所有者の寺の住職に送ったもの。
模造紙をつなぎ合わせ、漢字と片仮名交じりで「御寛大思召(おぼしめし)」でお許し頂ければ「感喜ノ至ニ御座候」などと約130字でしたためている。わらぼうきに墨を含ませて書いたらしい。冒頭の「謝罪状」の3文字はそれぞれ縦横1メートル以上ある。
「田中善助伝記」によると、檀家(だんか)が寺領を荒らされたことに怒り、謝罪状を書かせたが、その大きさに「住職はじめ檀家総代一同啞然(あぜん)たらざるを得」ず、平和的に解決したという。
「熱い意気込みや反骨精神を感じて」
公益財団法人「前田教育会」(伊賀市)は1999年、田中の足跡を紹介する展覧会を開いて以降、修復・所蔵してきた。ギネス世界記録に申請したこともあるが、該当するジャンルがなく登録には至らなかったという。今回、教育会が映画や音楽などのイベントに使ってきた小ホール「蕉門ホール」が設備老朽化で6月末に閉鎖することになり、25年ぶりに最後の展示をすることにした。
前田史子(ふみこ)・事務局長(68)は「謝罪状から田中の事業にかけた熱い意気込みや反骨精神を感じてほしい」と話す。
16日まで(13日休館)の午前10時~午後3時。入場無料。問い合わせは教育会(0595・24・5511)へ。(小西孝司)
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