三重県桑名市の多度大社で4日、「上げ馬神事」が始まった。馬に急坂の頂上にある高さ約2メートルの土壁を乗り越えさせる行為などが「動物虐待ではないか」と批判を受け、今年は土壁を撤去するなど馬の負担を減らす対策が講じられた。5日も営まれる。
神事には、氏子3地区から馬6頭が参加。武者姿の若者を乗せた6頭が、横にある約50段の石階段と同じ傾斜の坂道を順に駆け上がると、走路脇で見守った観客から拍手が湧いた。
父子で桟敷席から見物した地元・多度地区の男性(47)は「僕の年代では土壁が無いのは変。でも、神事がうまくまとまるなら時代の流れとして仕方ない」。息子(18)も「急に神事が無くなるよりは、変化しても続けられるほうがいい」と話した。
約700年の歴史があるとされ、馬が土壁を乗り越えられるかどうかで農作物の豊凶を占った。昨年、馬1頭が脚を骨折し、殺処分されたことなどで批判が殺到。三重県教育委員会の勧告を受け、祭りを仕切る御厨(みくりや)総代会が獣医師ら専門家の意見も聴き、土壁や坂路の改善、馬への威嚇や暴力行為の禁止などの改善策を取り決めた。
この日は、観客の最前列で数人の動物愛護団体のメンバーが「神事は動物虐待の言い訳にならない」などのプラカードを掲げ、一時、観客ともめる場面もあったが、大きな混乱はなかった。
上げ馬の後、総代会の伊藤善千代代表(75)は「思ったよりうまくいきホッとしている。今までの神事とは変わったが、人馬ともに安全でけががなければよい」と話していた。(中田和宏)
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